父が死亡し、長兄が「相続分のないことの証明書」という書類を持ってきて、これに判を押せと言います。この書類はどのような意味を持つのですか。
「相続分のないことの証明書」とは、被相続人の生前に、被相続人から相続分を超える贈与を受けたので(つまり、特別受益があるので)、すでに相続分がないということを証明する文書です。
この「相続分のないことの証明書」に実印を押印してしまうと、実際上、自分の相続分を放棄したのと同じことになり、相続権がなくなってしまう可能性が大です。たとえば、相続人として兄弟3人(A、B、C)がおり、B、Cが、「相続分のないことの証明書」に実印を押印してAに渡せば、Aは、相続財産である土地、建物について、すべてAの名義にすることができます。
しかし、この「相続分のないことの証明書」には、被相続人の財産の明細などは書かれておらず、単に、「被相続人の遺産について受けるべき相続分はない」とかかれているだけです。
「被相続人の財産の全体が不明なままでも、自分は相続の権利を放棄してしまってよい」という場合は、この「相続分のないことの証明書」に判を押してもよいですが、そうでないときは判を押さず、遺産の全体像を明らかにしてもらった後に、遺産分割の話し合いをした方が無難です。