少し前の話ですが、相続登記の依頼をいただきました。

母親が亡くなったので、母親名義の自宅の土地と建物を自分の名義にしてほしいとのことでした。

父親はすでに他界、相続人である子供は依頼人と姉と弟の3人。

依頼人は亡き父母と同居し、世話をしていたので、土地建物を依頼人名義にすることは兄弟間で話がついているといいます。

さらに話をうかがうと、この土地と建物はもともと父親のもので、父親が他界した時に、母と子供たち3人で話し合って母の名義にしたようでした。

相続人間で話がついていれば、案件自体は単純なものです。除籍謄本などを収集し相続人を確定させて、当事務所が作成する遺産分割協議書に相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書などの書類をいただければ、名義書き換えの登記が申請できます。

相続人確定のための除籍謄本などの収集の作業も依頼されました。

ところが、除籍謄本を取り寄せ始めると驚くべきことが判明しました。

なんと依頼人は相続人ではなかったのです。

この子供は3人とも実子ではなく養子でした。

もちろん、養子であっても権利は実子となんら変わることはありませんが、母親と養子縁組をしているのは弟だけで、依頼人と姉は母親と養子縁組をしていませんでした。

依頼人と姉は父親が独身の頃に養子になりましたが、弟は父親が結婚した後に縁組をしたので、母親とも養子縁組をしていたのです。

依頼人と姉も父親が結婚した時に母親と養子縁組をすれば問題はなかったのですが、気が付かなかったのか、そのままにしていたのです。

父親とは3人とも養子縁組をしていたので、父親の相続手続きの時にも気が付かなかったのでしょう。

法律上の相続人は弟一人です。

土地と建物を依頼人の名義にするには、一度弟名義に相続登記をしたのちに、売買や贈与などによって、依頼人名義に変えることになります。

依頼人に事実を告げるとさすがに驚いたようでした。

なんとか無事手続きをすることができましたが、弟が手続きを拒んだ場合や税金などやっかいな問題が発生します。

生前に母親と養子縁組をすれば、済む事案でした。

一度、推定相続人の確認をする作業もケースによっては必要かもしれません。

西野克己司法書士事務所 司法書士 西野克己