Bさんは何代も続く旧家の当主でしたが、不動産価格が急激に上昇した平成2年当時、銀行に「不動産価額が50億あり、相続税が20億もかかる」と言われました。
あわてたBさんはその所有する不動産に多額の借金をしてアパートやマンションを建設しました。その他にも、借金して別の土地を購入するなどして、借金の総額はとうとう20億円を超えてしまいました。
その後、土地の値段は長期にわたり下落し続け、平成19年にBさんが亡くなった頃には、資産の合計が18億に対して借金が19億という「債務超過状態」になっていました。したがって、相続税はかからなかったのですが、遺言の執行では問題になりました。
Bさんは「すべての財産は長男に、金融資産を他の相続人で相続しなさい、遺言執行人は長男とする。」という内容の自筆証書遺言を残していましたが、長男以外の相続人からは、不平不満が続出しました。
「Bさんがこんな借金だらけの相続対策をやらなければ、自分たちには莫大な相続分があったはずだ」という主張です。実際にBさんが行った相続対策のほとんどは、長男と相談して長男主導のもとにやったものであることも明らかになりました。
結局長男は、相続税を負担することはありませんでしたが、他の相続人に数千万円の代償金を負担し、借金だらけの不動産を引継ぐことになりました。
借金による節税対策は、「適度」でなければなりません。