遺産分割をうまく進めるための心構えについて教えてください。
遺産分割をうまく進めるためには、相続発生後はもちろん、相続発生前からも、下記のようなことに気を配っておく必要があります。
① 相続が発生する前
ア 人間関係
a 父A、母Bがおり、長男Cが跡を継ごうという場合、次男Dや長女Eが、父Aの財産について権利主張をするのは、長男Cが、長男らしい行動をしていない場合が多いものです。家業に精を出すとか、両親を大切にするとか、家を継ぐ者に相応しい行動を日頃から取っていることが大切です。
b 父Aも、長男Cに家を継がせるということを、折に触れて、次男D、長女Eに言い聞かせておいた方がいいでしょう。
イ 遺言書の作成
誰に何をあげるのかを決めることができますし、遺言執行者も指定できますから、遺言を書いた方がよいでしょう。
その際、上記の例で言うと、次男D、長女Eが何も相続しないというのでは角が立ちますから、少なくても、遺留分の半分くらいは相続させるような内容にした方がよいでしょう。できれば、遺留分に相当する財産を相続させるのが一番です。
※ 遺留分というのは、たとえば父Aが、遺言書に「次男D、長女Eには何も相続させない」と書いても、次男D、長女Eが取得できる相続分です。本来の相続分の半分が遺留分になります。
② 相続が発生した後
(1) 遺言書がある場合
遺言者の四十九日のときに、出席した相続人に対し、遺言執行者が遺言書のコピーを渡し、自分が遺言執行者に選任されているので、遺言にしたがって遺言執行していく旨を告げます。
遺言者の財産の目録も作っておいて、このときに相続人にコピーを渡します。
※ 資料を作成し、説明もきちんと行い、何事もオープンにするのが一番です。他の相続人に、隠し事をしているのではないかと不信感をもたれるのが最悪です。
また、態度も丁寧なものにして下さい。威圧的な態度で、早くまとめてしまおうとすると、逆効果になることが多いものです。
(2) 遺言書がない場合
遺言書がない場合は、相続人全員で話し合って、誰が何をもらうということを決めなければなりません。
この話し合いに臨む態度は、①の場合と大体同じで、話し合いをするのは、被相続人の四十九日か、その後が一般的です。被相続人の財産の目録をきちんと作っておき、コピーを渡します。
「後継者である自分がすべて相続するのが当然だ、他の相続人には、判子代程度しかやるつもりはない」という態度はよくありません。法的には、均分相続が原則ということを肝に銘じる必要があります。
また、相続人が、家を継ぐものが多く取ることを承諾するのは、それを正当化する理由があるときだと考えておいた方がよいでしょう(家業をきちんと継いでいるとか、親の面倒ときちんとみているとかです)。話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成します。